弁護士ブログ

2017年4月17日 月曜日

自分が自分であることの証明は難しい?

 皆さん,「そして,誰もいなくなった」という藤原竜也さん主演のドラマをご覧になったことがあるでしょうか。このドラマでは,ある日突然,行政の個人情報がまるごと何者かに乗っ取られ,自分が自分であることが証明できなくなる,そんな設定がされていました。 そんなドラマのような相談が,当事務所でもありました。

 ある相談者Aさんが某区役所である手続きをしようとしたところ,身分証明書がないうえ,知らない人物に勝手に住民登録を移され,しかも,その人物が運転免許証を取得したため,役所がその人物をAさんであると扱うと言われてしまい,生活に支障を来し,困っているということでした。 Aさんは,お母さんを頼りに20年ぶりに実家に帰りましたが,既にお母さんは末期の癌で入院していました。もちろん,お母さんは間違いなくAさんが息子であると言ってくれましたが,役所はAさんをAさんだと認めてくれませんでした。その後,様々法律相談を巡りましたが,どこもまともに取り合ってくれなかったそうです。

 そんなとき,私の事務所に相談に来てくれました。私は,まずはDNA検査を受けることを勧めました。当然,お母さんとAさんは息子であるとの検査結果が出ました。しかし,それでも役所はAさんであるとは認められないとのことでした。

 そこで,私は,勝手に住民票を移した人物を公正証書原本等不実記載罪で告訴することとしました。当初,警察も半信半疑のようでしたが,粘り強く交渉した結果,告訴は受理され,この人物は結局,有罪判決を受けました。

 お母さんは,刑事事件として受理されたことを知って安心したのか,警察でのDNA鑑定を終えた直後,亡くなってしまいました。親の子供に対する愛情の深さを実感しました。

 この後,私は役所に住民登録をしにAさんに同行しました。このときの役所の対応はもはやブラックユーモアともいえるものでした。役所はAさんに「住民登録されるなら身分証明書を提示してください」と言ってきたのです。私は呆れかえってしまいましたが,このようなこともあろうと経過を記載した弁護士名義の書面を作成して持参していました。役所は,私のこの書面をもってようやく,AさんをAさんと認め,住民登録をし,身分証明書の発行にこぎつけたのです。

 自分が自分であることの証明って,こんなにも難しいものなのか,私は身をもって知りました。また,Aさんには大変に喜んでいただき,今後も依頼者のために全力で頑張っていきたいと決意させていただいた事案でした。

屋宮昇太

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2017年4月12日 水曜日

絶滅確定種弁護士の決意

    我が事務所の弁護士は現在8名です。そのうち5名が旧司法試験の合格者,3名が新司法試験の合格者です。今は新司法試験の合格者が毎年大量に輩出されるので,どこの事務所も新司法試験組が相当の割合を占めていると思います。つまりは,私を含めた旧司法試験組は絶滅危惧種,いや時間の問題で絶滅確定種です。

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    絶滅確定種

   新司法試験というのは,2006年(平成18年)から始まった試験で,原則,法科大学院(3年間または2年間)を修了して(例外として予備試験を合格して)受験資格を得られる試験です。
 手前味噌ですが,うちの新司法試験組,つまり若手の3名は実に優秀です。滅多なことでは他の事務所にひけは取らないと自負しています。依頼者の方々の悩みや心情までくみ取って解決の方途を探り,裁判の書面を立派に起案してくれるのは当然のこと,雑学も豊富ですし,なかにはジャグリングの大道芸で稼げるのではないかと思う者までいます。

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    大道芸弁護士

 さすがは,多様な人材に対し「法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とする」と法律に定められた法科大学院での教育の賜物です。
 大学を卒業して就職せずに,高い学費を負担してあえて法科大学院に進学したのですから,それは当然のこと―――  と思いたいのですが(いや,うちに限ってはそのとおりなのですが),今,法科大学院は大変な危機的状況におかれています。というか,一部のブランド大学院とそれ以外の大多数の大学院との二極分化が進み,後者は生き残りをかけて必死に学生集めに走り,だめなら募集停止,閉鎖という流れになっているのです。
 実際,法科大学院制度が始まった2004年(平成16年)の法科大学院志願者は7万2800人であったのに,2016年(平成28年)には8274人と,1割そこそこまで落ち込み,一時74校あった法科大学院は,すでに閉鎖したり閉鎖予定のものを除くと,わずか42校になります。
 それほど裁判官,検察官を含めた法曹に魅力がなくなったのかと,愕然たる思いがします。
 その主要な原因は,需要と供給のミスマッチです。それまでの旧司法試験では1000人程度の合格者数であったのが,新司法試験では,概ね2000人から2100人程度と倍増しました(それでも医師国家試験並みの70パーセント程度以上の合格率をうたっていたはずが,法科大学院乱立を許したために,実際はせいぜい20パーセントそこそこに過ぎす,大半の法科大学院修了者が不合格で終わってしまうのが現実です)。さすがに3000人という当初の目標まではいきませんでしたが,それでも,裁判官,検察官の任官者はそれほど増えていないため,弁護士が大量に増えただけです。そうなると,今度は弁護士の就職難となり,なかなか就職できなかったり,給料が低下したり,訴訟事件等の依頼案件の奪い合いという現実が生じました。
 高い費用を払って法科大学院に行っても司法試験に受かる保証はない(受からない可能性の方が高い),仮に司法試験に受かって弁護士になっても高収入は期待できないどころか,食い詰めるかもしれない――となれば,法科大学院進学のモチベーションが低下するのもむべなるかな,であります。
 一昔前は,少なくとも弁護士になれば「センセイ」と呼ばれ,比較的高収入が約束されていたはずなのですが......。 いや,それはそれとして,ここまで志願者が激減すると,多数の優秀な人材が法曹に背を向けるということを意味し,これは実に深刻な問題です。20年先,30年先の司法はどうなるのか,と憂えざるをえません。
 こんな状況にしたのは,国が,国民に身近な司法制度などと聞こえのよいキャッチフレーズで実態無視の改革を強行したからにほかならない!!!  と,びっくりマークを重ねて言いたいことは山ほどありますが,我が事務所は,このような悪状況の中で,ともかく各弁護士が専門性を高め,ご依頼くださる皆様のご要望に誠実かつ確実な結果を提供できるよう努力していくしかないと決意しております。
 高齢者問題,医療過誤問題,離婚・面会交流など家庭問題,相続問題,交通事故問題,労働問題,刑事事件等々,どの事件一つをとっても,それぞれに人間と人間のドラマがあります。そこにしっかりと向き合って最善の解決策を探ります。そして,そのために事務所内で相互研鑽の勉強会を開催して法律知識のバージョンアップを行い,スキルアップを図っています。
 私たちは,魅力ある法曹像を提示できる法律事務所を目指します。一人でも多くの優秀な後輩が法科大学院を志望してもらえることを信じて。

松村光晃

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2017年4月 9日 日曜日

建築請負紛争と裁判外での紛争解決手続(ADR)

 マイホームの新築工事をお願いしたが,手抜きや不具合(欠陥)があった,契約した仕様と違っている,あるいは,追加工事を頼まれたが追加工事代金を支払ってもらえないなど,建築工事に関連する争いは結構多く発生します。しかし,この種の紛争では,法律的な問題だけでなく,建築工事に関する技術的な問題,あるいは設備に関する専門的な問題等が存在し,当事者間での話し合いでは解決の見込みが立たない場合があります。建築紛争は,裁判の中でも難しい部類に属し,東京地方裁判所でも,この種の事案を専門的に扱う民事第22部という専門部が存在するほどです。

 当事務所においても,大きなショッピングモールの建設工事から,マイホームの工事代金の紛争に至るまで,多くの事件を扱っておりますが,ここでは"裁判までやるのはちょっと"とちゅうちょしてしまう場合に,専門家による迅速かつ簡便な解決を図ることを目的とした紛争解決機関について紹介します。

 建築工事に関する裁判外の紛争解決機関にも色々ありますが,その草分け的な存在としては,各都道府県に設置されている「建設(けんせつ)工事(こうじ)紛争(ふんそう)審査会(しんさかい)」があります。当事務所にも東京都の紛争審査会の委員をしている弁護士がおりますので,その弁護士の説明を簡単にまとめてみます。

 この審査会では,建築請負契約に関連する紛争について「調停(ちょうてい)」「あっせん」「仲裁(ちゅうさい)」という手続きができるようになっていますが,最も多く利用されているのは「調停」手続きです。これは,あくまで当事者の歩み寄りによって解決を目指す手続であり,法律委員1名,専門委員2名の合計3名の調停委員で話合いが進められます。法律委員はベテランの弁護士や元裁判官から構成され,法律的な観点から事案の問題点を探るとともに,話合いの進行役を務めます。専門委員は,一級建築士や建築事務所の代表者,あるいは土木関係や設備関係の専門家,さらに構造設計の専門家などから構成され,事案に応じて編成が変わります。したがって,請負契約の法律的な問題点はもちろん,提出された図面や見積書,工事の進捗状況や工事の実態等から,技術的,専門的な問題点をあぶり出し,ある時は問題点の整理をし,ある時は専門家の観点から指摘を行ない,さらに,事案によっては調停案を提示するなどして,問題解決の方途を探ります。

 もちろん,調停は話合いの場ですから,証拠によってギシギシと詰めていくことはしませんが,建物の発注者も,これを請負った建築業者も,自分たちのやっていることや考え方が専門家の公平な目で見た時,どのような評価を受けるのかということが,ある程度分かります。そのようなことから少し考えを改めて,譲歩してみようといった態度も生まれてくるわけです。また,工事の規模や,争いの大きさからいって,弁護士に依頼して裁判までするのはどうかといった場合でも,裁判ではなく,弁護士にも依頼しないで,この制度を気軽に利用している方もいるようです。

 「調停」のほか「あっせん」と「仲裁」がありますが,「あっせん」も話し合いを行う手続ですが,技術的,法律的な争点が少ない場合に利用するもので,委員も1名だけで担当します。「仲裁」は,紛争の解決を審査会の判断にゆだねる「仲裁合意」に基づいて行われ,仲裁委員3人が,当事者の言い分を聞きながら,証拠に基づいて裁判所に代わって判断を下します。仲裁判断が下された場合,その内容について裁判所で争うことはできません。

 建設工事紛争審査会のHP
  http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_mn1_000101.html

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2017年4月 1日 土曜日

「わかりやすさ」を心掛けているのが「光伸法律事務所」です。

 最近読んだ本の中で、国立国語研究所という機関があることや、その中に病院の言葉委員会があり、「病院の言葉」を分かりやすくする提案がなされていることを初めて知りました。 
 そこのホームページを開くと、病院の言葉を分かりやすくするために、具体的には、

 「類型A」(認知率が低く一般に知られていない言葉。Ex誤嚥、寛解等)、
 「類型B」(認知率は高いが、ほかの意味と混同されたりする言葉。Exインスリン、悪性腫瘍、貧血)、
 「類型C」(重要で新しい概念の普及を図る。Exクリニカルパス、QOL等)

とに分けて、類型Aは日常語で言い換える、類型Bは正しい意味を理解してもらえるように、場合によっては一歩踏み込んだ説明を、さらに混同を回避するための工夫をする、類型Cは、それを的確に表す簡潔で分かりやすい言葉が必要だが、カタカナの長い語形はわかりにくいので、言い換えたり、時間をかけてじっくりと丁寧に説明するなど、具体例を通しながら、改善を提案しています。

 翻って、我々法律家の使う言葉は、どうでしょうか。法律用語であったり、裁判用語であったりするため、病院の言葉と同様、わかりにくいものが多いのではないかと思います。上述の病院の言葉委員会は、患者の目線で、わかりやすく説明するため、57語を取り上げて具体的に提案していましたが、このような姿勢は、我々法律家にも求められているように思います。

 思いつくままに法律用語をいくつか上げてみると、「不作為」、「履行」、「遡求」、「瑕疵」、「無形損害」、「囲繞地」等々、色々あります。しかも法律用語の場合、定義をどのように考えるべきかという問題が絶えず横たわっています。当該条文の立法趣旨に遡った上でその文言の意味内容を確定することが必要になる場合もあるし、現実の事象がその条文に照らして当てはまるのかどうかについて結構微妙な場合もたくさんあります。

 法律の世界のことについて、わかりやすく説明すべきは当然その通りなのですが、分かりやすく説明することで、かえって大事な意味内容が削げ落ちてしまう危険があることも、また知っておく必要があります。

 法律家にとって大事なことは、その説明を聞いた相手に対して、誤解を与えないこと、正しく理解してもらえるようわかりやすく説明すること、そしてそれは相手の理解度に応じて柔軟に対応できるよう、常日頃からこのような問題意識をもって研さんを積んでいくことではないかと思います。

 そのことを、病院の言葉委員会(http://pj.ninjal.ac.jp/byoin/)は、改めて私に教えてくれました。 我が法律事務所は、「依頼者に寄りそう」、そして「わかりやすさ」をモットーにしています。他の法律事務所で相談してみたものの、ちょっと分かりにくいなと思ったら、是非、我が法律事務所にお気軽にご相談下さい。きっと「わかりやすさ」を実感していただけると思います。

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